大型膜面アンテナ

こんにちは,cosmobloomエンジニアの折居です.

天文観測衛星や大容量の通信衛星,宇宙太陽光発電システムなどは,ミッション遂行にあたって非常に大きなアンテナを必要とします.一方,衛星はロケットで輸送されることから,コンパクトに収納できて,かつ軽量である必要があります.

ここで,膜面のような構造部材は,小さく折り畳んで大きく広げることができ,質量がスケールの二乗にしか比例しないことから,この特性を上手に活かせば,コンパクトかつ軽量,しかも大面積のアンテナを実現することができます.

膜面にアンテナの機能を付与するには,印刷回路の要領でアンテナ素子のパターンを実装すれば良く,さらに,このアンテナ素子を縦横等間隔に沢山配置してアレーアンテナにする,位相器を取り付けてフェーズドアレイアンテナにするなど,さらなる機能を付与することもできます.

一方,大型膜面アンテナを折り畳むには,電気的特性と機械的特性の両者を損なわないための工夫が必要となります.例えば,折れ線とアンテナ素子が交錯すると,折り癖がついてアンテナの実効長や特性インピーダンスが変わってしまう可能性があります.さらに,アンテナ素子どうしの間隔が空き過ぎる,あるいは欠落すると,グレーティングローブと呼ばれる不要放射が発生してしまいます.

また,モジュール化によって大型の構造物を構築する,と言う前提で考えれば,膜面の形状は正三角形,正方形,正六角形のようなかたちに限られます.したがって,大型膜面アンテナの折り畳み方は,この限られた形状の中から,アンテナ素子と折れ線が交錯せず,アンテナ素子を欠落なく敷き詰められるようなものだけ許容されます.膜面の折り畳み方はこれまでに沢山提案されてきましたが,そのうち,大型膜面アンテナに適用できるものは極めて限られています.

以上の内容を踏まえ,我々は,正三角形の膜面に回転二重折りを組み合わせた折り畳み方を提案しています.また,この折り畳み方を使用した展開構造物の宇宙実証を目指して,設計・開発を進めています.

cosmobloom

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