開けばいいってもんじゃない
こんばんは.cosmobloomの宮崎です.
宇宙の展開構造物というと、一番、身近?なのは、太陽電池アレイ(solar array panel、SAP)とか.展開アンテナでしょうか。SAPの場合、展開して、それなりの形状になっていればOK、という感はありますが、アンテナの場合、当然のことながら、ただ展開すればいいというわけではなく、所望の形状からある範囲の誤差以内に収まっていないといけません。
とはいえ、例えば、比較的剛な曲面版を使った展開アンテナであれば、機構部も含めて、精度管理は特別に難しいわけではありません。もちろん、要求される精度によりますが。しかし、柔軟で軽量な部材でつくるとなると、部材が変形しやすいので、柔軟であればあるほど、いろんあことを考慮しながら精度管理をしないといけなくなりまず。
左の(上の?)立体トラスは、自己伸展ブームを用いた三角形トラスを4つ結合して三角錐にしたもので、「ただ開けばいい」ということであれば、この画像の通り、簡単に開きます。ですが、展開後の形状精度を要求し始めると、「トラス部材はどういうものがいいか?」、「展開後のラッチはどうするか?」、「取り付け精度はどうやって管理するか?」、「そもそも、ノード部(部材の収納・伸展機構部)の精度管理はどうするか?」、などなど、当たり前と言えば当たり前ですが、一つ一つのことをきちんと考えてつくる必要があります。
ですが、技術のある企業さんであれば、そうやって作ろうといえば、作れるのだろうと思います。
で、問題となるのは、「宇宙で本当にその精度で展開しますか?」という点です。地上であれば、展開した後の形状を計測すれば、所望の精度で展開できたか、確認することができますし、ダメだったら、設計しなおせばいいのだろうと思います。しかし、宇宙で、となると、「ダメなら設計し直して、打ち上げ直す」というのは時間的にも予算的にもキツイので、事前に(打ち上げ前に)、「これならいける」ということを確認(検証)する必要が出てきます。
これが、柔軟で軽量な展開構造物となると、なかなかキツイわけです。なので、国内外をみても、展開宇宙構造物の展開様式は限られていているわけですね。ですので、「こういう構造物は、こういうことを考えて、こういう風に設計して、地上でこういう検証をしておけば、大丈夫ですよ」というような設計理論というか、開発理論のようなものをつくりたいなあと。
もっと気軽に軽量展開構造物を宇宙で使えれば、と思う今日この頃です。
宮崎 康行