展開構造の「安全性」と「信頼性」

こんにちは,cosmobloomの中村です.

宇宙機を設計する際,必ず考慮しなければならない事項がシステムの「安全性」と「信頼性」です.ここで,安全性を考慮して設計するとは,システムの内部で異常が起きた時に事故が起きることを防ぐ設計する,ということです.展開構造であれば,システム内部で異常が起きて予期せぬタイミングで展開してしまうと,それが起きた場所(地上であれ,ロケット内であれ,宇宙であれ)によっては,周りのものに被害を与えたり,人をけがさせてしまうといったことが起こる可能性があり,そういったことが起きないような設計が求められます.一方,信頼性を考慮して設計するとは,システムの内部で異常が起きた時に機能・性能を維持できるように設計する,ということです.宇宙機は一度打ちあがると,その後に人の手で修理をしたりといったことができないので,どこかに異常が起きたとしても観測や運用が続けられるような設計を求められます.これに関しては,同じ機器を2つ用意して,一方が壊れた場合はもう一方を使うといったことがなされます.

安全性を確保するためになされる対処はインヒビットと呼ばれ,信頼性を確保するためになされる対処は冗長と呼ばれます.一般にこれらは相反する関係にあります.展開構造であれば,インヒビットと冗長(一例)は以下のようになります.

  • インヒビット:予期せぬ誤展開が起こらないように,展開を行うためには複数の電気的なスイッチ(よく言われるのは3つ)がONにならないと展開しない
  • 冗長:保持解放機構(構造物の展開を保持しておき,任意のタイミングでそれを開放して展開させる機構)が壊れると,構造が展開しなくなってしまうため,機構を2つ搭載しておき,一方が壊れても,もう一方が使えるようにする

簡単な言葉でいえば,インヒビットは「構造が展開しない側」,冗長は「構造が展開する側」の対処になっており,これらの相反する対処をシステムに施す必要があります.特に超小型衛星では,質量や体積,電源等のリソースが限られているため,これらの対処を最小限に抑えて安全性と信頼性を確保することが望まれます.こういった場合,展開構造としては,完全に展開するまでに複数の段階を要する(そのために複数の機構を要する)ようなものは,あまりよい構造とはいえません.理由としては,その機構が増えるごとにインヒビット設計や冗長設計を求められる可能性があり,これがリソースの圧迫につながるからです.また,リソースの関係で冗長がとれないといったことになると,その機構が必ず正常に動作し,展開に影響しないことを何らかの方法で検証する必要があります.機構が増えるほど検証項目も増えることが予想されるため,時間やコストのリソースも限られていることが多い超小型衛星の開発にとっては,それが足枷になることも考えられます.

こういったことから我々は,小さな衛星に搭載する展開構造においては,なるべくシンプルな展開方式,例えば保持を開放するとワンアクションで展開が完了する構造が適していると考えています.前回のブログで紹介した自己展開膜面トラスはそのような構造の一つであり,モータを使った構造などに比べて構造の「安全性」と「信頼性」を確保しやすく,こういった観点からも低リソースに構造を構築できると考えています.