柔軟展開構造物の設計

こんにちは。cosmobloom(CB)の宮崎です。ブログを書くのは2か月以上ぶりでして、その間、いろいろあり、ここでお話しさせていただきたいこともいくつかあるのですが、今回は”柔軟展開構造物の設計”について、書かせていただきます。

最近、太陽電池パネルやセンサー搭載ブーム、月面用太陽電池タワー・多目的タワー、低周波帯用アンテナ(八木・宇田アンテナ等)などに、開断面ブームや膜、ケーブルなど、軽量で柔軟な部材で構成された展開構造物を用いることが予定され、開発が進められています。

展開構造というと、折り畳み方、収納状態、展開完了状態を考えて、確認用のモデルをつくって、「これでいけそうだ(展開しそうだ)」と判断できたら、開発を始める、というケースが多いのかなあと感じています。つまり、「モデルをつくって実験してみたら展開しそうだから、これでいこう」、というケースですね。

ただ、最近、特に感じていることは、「設計者は、展開途中の状態(形状)も想定した上で設計した方がいいんじゃないかなあ」という点です。つまり、例えば、「実験してみたら、途中は複雑そうな動き方をしているけど、最終的に開いたのでOK」というやり方は、ちょと危ないのではないかなと思うわけです。

柔軟展開構造の設計は、本来、難しいことではないです(会社的には、「難しいから、そこは弊社にお任せください」ということになっているので、「難しくない」というと、CBの他のメンバーに怒られそう?ですが)。設計者が、収納時から展開完了時までの状態の変化を、時系列を追って想定し、その想定が妥当であるのか、想定からズレる部分については、何が原因で、それが展開不具合といったクリティカルな結果を生まないのかを考えて、それに基づいて設計をすれば、特に問題は起きないと思っています。

ただ、繰り返しになりますが、途中をちゃんと想定せずにやってしまうケースが結構、あるのではないかなあと感じています。その場合、開発段階での試験において、展開不具合が起きると、その対応がなかなか難しいかもしれません。もしろん、微修正で大丈夫なケースもありますが、「これって、根本的に設計を見直さないとキツイよね」というようなこともあり得ます。

ということで、「途中を想定する」というのは、結構大事なのではないかなあと、最近、改めて思っているところです。

以前(コロナ前なので、5、6年前くらい)、「ふつう、設計者は、展開途中の形状を想定して、展開構造の設計をするだろう。そして、想定したものからのズレをみて、どのようなモードが存在するのかを調べて、展開運動を理解したり、問題のアリ・ナシを考えたり、設計を修正したりするだろう」という前提に基づいて、展開運動のモード分解法をちょっと研究したことがありました(下の動画がその例です)。これを発展させて、展開構造に関するご相談をいただいた際には、「御社の展開構造物にはこういう特徴があって、今回起こった不具合の原因は、ここにあると考えられますので、ここをこう修正されるとよいと思います」、「軌道上ではこういうモードの運動が励起されて、不具合が起こる可能性があるので、それを防ぐためには、こういう対策をとるといいと思われます」、というような回答ができる会社にCBがなれればなと思う今日この頃です。

宮崎 康行

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