月面天文台構想

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こんばんは。cosmobloom(CB)の宮崎です。

SNSはノーベル賞の話題で盛り上がっていますね。AI、強いですねえ。

さて、ちょっと古い話になりますが、今年の5月ごろに、「月面天文台」構想がネットニュース等に流れていました。

左の想像図で、ランダーから上に伸びているT字の棒のうち、横に伸びているのが、深宇宙からの数十MHz帯の電波を受信するためのダイポール・アンテナです。私は宇宙論に関して全くのど素人ですので、深くは理解できていないのですが、ざっくりいいますと、いわゆる宇宙の暗黒時代からの21cm線グローバルシグナルをとらえるための予備実験といいますか、プリカーサ―といいますか、基礎技術を実証したり、月面の電波環境を計測したりするものです。将来は、複数の月面天文台を月の裏側に設置して、干渉観測によってグローバルシグナルを高精度でとらえて、宇宙論のパラメータを推定(制限)しようというものだそうです。

プロジェクト名はTSUKUYOMIで、宇宙研や、天文台、大阪公立大、岡山理科大、東北大、熊本大の理学系の先生方のチームで研究・開発が進められています。このグローバルシグナルをホントにちゃんととらえることができると、なんか、すごいそうでして(ノーベル賞級のものらしいです)、米国や欧州、中国でも最近、研究・開発が盛んになってきています(競争ですね)。

今のところ、アンテナは自己伸展式の金属ブームになる予定です(CBではないですが、これまで私の研究室で研究して発表してきた理論をベースに、ある企業さんと一緒に開発を進めています)。自己伸展式にしているのは、できるだけ軽量につくりたいからなのですが、モーター等で強制的に伸展させる方式ではないので、確実に伸展してくれるか、ドキドキです。

ちなみに、縦に伸びているのはアンテナを支えるための支柱で、これも打ち上げ時には小さく収納しておいて、ランダーが月面に着陸した後、伸展させます。こちらはモーターを使って確実に伸展させることが考えられています。

ダイポール・アンテナは差し渡しで5m、支柱も、多分、5m程度のものが検討中ですが、月には地球の1/6とはいえ、重力があるので、軽量な伸展ブームでこの重力に耐えないといけないというのが、意外とやっかいかなと(質量を気にせず、それなりにしっかりした伸展構造にしてしまえれば、もうちょっと楽なんでしょうけどねえ・・・)。ですが、普段は無重力下での伸展構造・展開構造を考えている身にとっては、いろいろ新鮮なこともあって、おもしろいです。それと、なんといっても、理学の先生方の議論を聞いていると、おもしろいんですよねえ(深いところは理解できていないですが、「なるほど~、そうなのかあ」って思うことが多いです)。

とはいえ、実はまだ構想段階で、打ち上げが決定したわけではないですし、打ち上げることになった場合も、どういった体制で開発することになるかは確定したわけではないですが、2028年にランダーが着陸して、このダイポール・アンテナでデータを取れたら、ちょっと嬉しいかなと。

月面については(ついても)、いろいろな伸展構造物が検討されていますが、技術的にはそれなりにハードルが高いものが多いので、CBにも挑戦的で斬新なアイデアで?、月面開発にも乗り込んでもらえると嬉しいかなあと(ビジネス的には、月面よりは、デオービット装置や膜面アンテナだとは思いますが)。

宮崎 康行