「張力場」と「電磁場」を組み合わせる

こんにちは,cosmobloomエンジニアの折居です.

大型膜面アンテナを設計するためには,機械工学と電気電子工学を含んだシステム領域での検討が必要となります.宇宙構造・材料分野においては,これまでも「宇宙構造物システム」という概念がしばしば用いられてきたのですが,これは「STRUCTURE」と「MECHANISM」と「CONTROL」を組み合わせたシステム領域のことを指していて,機械工学に閉じています.そこで今回は,従来の「宇宙構造物システム」に「電波工学」や「無線通信工学」などを含む,「次世代の宇宙構造物システム」を創造することについて考えてみます.

まず,アンテナを構成するアンテナ素子や伝送線路の性能は電磁気学によって記述することができます.電磁気学の最も基本的な方程式はマクスウェル方程式です.また,アンテナ素子の性能は,マクスウェル方程式から導出されるヘルムホルツ方程式によって記述され,伝送線路の性能はマクスウェル方程式から導出される電信方程式によって記述されます.

次に,アンテナや伝送線路を支持する膜面は張力場理論によって記述することができます.また,張力場理論の動的なふるまいは運動方程式によって記述され,静的なふるまいは釣り合い方程式によって記述されます.

大型膜面アンテナという構造様式は,言わば「アンテナ素子群や伝送線路が張力場上に拘束されたもの」であり,アンテナの性能は張力場の質に大きく左右されます.そのため,アンテナ性能を予測するためには,張力場が電磁場に及ぼす影響を記述するための理論が必要です.

そのための具体的な手法として,ヘルムホルツ方程式や電信方程式を一般化して,それぞれの方程式に張力場の設計パラメータを取り込めるようにすることが重要であると考えています.そして,この手法によって体系化された理論は,電磁気学と張力場理論の中間に位置して,「次世代の宇宙構造物システム」の問題を扱う学問領域のひとつになっていくと思います.