「空気」を駆使する
こんにちは,cosmobloomエンジニアの折居です.
前回のブログでは,2枚の膜面を用いることで間の空気層を基板として活用できる,というお話をしました.実は,高周波デバイスにおいて,空気(宇宙空間においては真空)を利用するアイデアはしばしば見受けられます.
空気を絶縁体(誘電体)として利用するアイデアには,電気的なメリットが存在します.それは比誘電率や誘電正接が極めて小さいことやこれに伴って伝送損失が少ないことです.このメリットを活かせば,高性能な高周波デバイスを製作することができます.たとえば,アンテナ素子の基板材としてハニカムコア材を用いることで,広帯域のアンテナを設計することが可能です.
また,同軸ケーブルなどは,誘電体としてポリエチレン樹脂やフッ素樹脂を用いることが多いのですが,これは,これら樹脂の比誘電率が小さいためです.より低損失であることが求められる場合,樹脂を発泡させて比誘電率を下げるなどの工夫をすることもあります.さらに誘電率を下げたい場合は,誘電体を肉抜きして中空に近い状態を再現するなどの工夫もあるようです.
一方,中空の同軸ケーブルは形状を維持しつつ取り回すことが難しい,という課題があります.初期の同軸ケーブルは誘電体として空気を用いていたそうですが,現在は樹脂を用いることが一般的です.このように,電気的な性能の限界が構造様式によって規定されることは非常に興味深いと思います.
次回は,大型膜面アンテナに実装する伝送線路についてお話できればと思います.