「三位一体」となってものづくりをする :その③

こんにちは,cosmobloomエンジニアの折居です.

前回のブログでは,「マネージャ」のクラスから,数値解析ツールにどのような機能を求めるのか,と言うことについてお話しました.マネージャの仕事は意思決定であり,その意思決定の妥当性について,定量的に評価できる機能が望まれると思います.今回は,「職人」のクラスから,数値解析ツールにどのような機能を求めるかについて考えてみたいと思います.

ものづくりの工程は「概念設計」に始まり,「詳細設計」を経て「生産」に至ります.この「生産」の工程では,設計者が書いた図面などから工程を組んで材料を加工して,実際に製品を生みだします.このとき重要なのは,加工機の仕様や加工手順などの都合によって「作りだせない形状」や「達成できない加工精度」が存在する,ということです.

例えば,オーバーハング部とよばれる窪みは,3軸のマシニングセンタなどでは工具が入らず加工できません.そのため,オーバーハング部が存在する部品は,5軸のマシニングセンタや3Dプリンタなどを用いて加工するか,3軸のマシニングセンタを用いる場合は加工品を取り付け直す必要があります.この取り付け直しには取り付け誤差が乗ってしまうので,高精度が求められる場合は多用したくないところです.

また,旋盤などの切削加工機についても,加工機内のギアのバックラッシ分は位置決めができないので,達成できる加工精度には限界があります.また,ボール盤などの穴あけは,優れた職人が加工したとしても,位置決め誤差がコンマ数ミリほど乗ります.

加えて,加工品には「つかみ部」が必要となりますが,設計時には考慮されないことがあります.つかみ部を考慮しないで設計すると歩留まりが悪くなり,コストが高くなってしまうこともあります.

このように,設計者は「作りだせない形状」や「達成できない加工精度」があることを踏まえて,事前に対処できれば良いのですが,例えば,加工時の制約を定式化して,大規模な数理計画の中で数値解析を解くようなことができれば,設計時に「職人の声」を反映することが可能になると考えます.