宇宙開発におけるアジャイルな開発手法とは

こんにちは、cosmobloomの小野です。

昨今の開発現場ではアジャイルという言葉をよく耳にします.アジャイル開発とは,ソフトウェ開発方法のひとつで,絶えず変化する開発状況に柔軟に対応することを主眼に置き,短いサイクルで開発とフィードバックを重視する開発方法です.

アジャイル開発の原則は以下の4つです.

  1. プロセスやツールよりも個人と対話を
  2. 包括的なドキュメントよりもソフトウェアを
  3. 契約交渉よりも顧客との協調を
  4. 計画に従うよりも変化への対応を

スクラムやカンバン,エクストリームプログラミングなど,様々なアジャイル開発手法がありますが,これらの手法は上記原則をベースとしており,特定の状況やプロジェクトの要件に合わせて組み合わせたりカスタマイズしたりすることがあります.

ソフトウェアに限って話をするのであれば,1~4週間という短いサイクルで,その都度,実際に動作するソフトウェアが作成されます.そして,それをもとにステークホルダーや顧客からのフィードバックを受け取りそれを次のサイクルに改善点として取り込みます.この時,動くソフトウェアをステークホルダと直接確認するため,要件の優先順位や細かい仕様はは絶えず変化してゆきます.これらの変化に対応するためにはアジャイルの開発チーム内ではチーム内のコミュニケーションが重要となります.ソフトウェアにおけるアジャイル開発は短い期間でサイクルを回し,変化する状況に対応できるようにチームを作りプロダクトを作り上げていきます.

一方の宇宙開発においてもアジャイルという言葉が使われています.実際,令和5年の宇宙基本計画ではアジャイルな開発手法を取り入れるとあります.宇宙開発でのアジャイルというのは一体何でしょうか.上記の例に当てはめた際,どのような形になるでしょうか.正解はありませんが,例えば,衛星を作るとしても,

  1. インテグレーションや重要なデータ結合に関しては最優先で対話や試験を行う
  2. 何よりも早く試作品を作り上げる
  3. 問題が発生した際に,ある一社のみで解決を図るのではなくチーム全体として問題解決を図る
  4. より細かい情報共有による柔軟なスケジューリング

といったところでしょうか.

宇宙機の製造はこれまで通り,得意な技術を持った企業や研究機関が協力して作ることになります.アジャイル開発というのは,チームで作り上げるものなので,責任はチーム全体で共有しなければなりません.これまでの企業間の責任問題の考え方ですと,アジャイルな開発は難しいかもしれません.責任問題に関する考え方はすごく難しい問題なので真の意味でアジャイルというのはあまり現実味がないのかもしれません.

ですが,宇宙機の開発,打ち上げのサイクルをこれまでよりも早くすることを宇宙産業でのアジャイルというのであれば,EM・FMの考え方をE/FMにするとか,同型機はFMの試験を省くとか,そういった変化を加えることになるだろうと考えています.

いづれにせよ,現状の考え方をダイナミックに変える必要がある大きな試みです.宇宙産業に携わる企業としてcosmobloomもその変化に寄与できるように活動していきたいと思っています.

それではまた来週お会いしましょう。

小野弘幸

CEO

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技術顧問

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