ゴッサマー構造の罠?
こんにちは.cosmobloomの宮崎です.
ものごとにはメリットとデメリットがあって、メリットが大きいと、デメリットには目をつむって?、あるいは、デメリットを何とか克服して?、メリットを活かしてものごとを進めよう、ということはよくあるかと思います。しかし、結局、デメリットのためにうまくいかないかもしれません。メリットが大きすぎると、この”罠”にはまって、時間やお金を費やしてしまうことって、結構、あるのではないでしょうか?
膜やケーブルなどといったゴッサマー構造もその例に当てはまるのかもしれません。ゴッサマー構造は、軽量で収納性が高いという大きなメリットがあるので、宇宙構造物に使いたくなりますが、当然ながら、デメリットもあります。
例えば、これまでにもブログで書いてきた通り、「地上検証がしにくい」という大きなデメリットがあります。すなわち、地上にあると重力の影響を強く受けるので、宇宙空間(微小重力環境)では起こらないはずのことが起きたり、起きるはずのことが起こらなかったりすることが予想されます。したがって、地上で何かの検証をする際には、よく気を付ける必要があります。
「そんなこと、当たり前だろ」と言われそうですし、実際、その通りなのですが、例えば、膜面等を支持する構造が比較的しっかりしていて、かつ、それほど大きくない構造物ですと、「重力の影響はそこまで大きくはないだろう」と思ってしまうこともあるかもしれません。
実際、あまり大きくない構造物ですと、何となく、宇宙での挙動も予想ができてしまうというか、予想できると思ってしまいがちです。これは、半分は正しくて、だからこそ、超小型衛星ではいろんなことに挑戦ができるのだと思います。
ですが、残りの半分に当てはまってしまった場合、思いもよらない現象が起こることがあるかもしれませんし、「サイズが小さいときには問題なかったのに、ちょっと大きくしたら、うまくいかなくなった」ということが起こるかもしれません。といいますか、ゴッサマー構造の場合、ちょっとしたこと(ちょっとした荷重)で大きく変形してしまうので、これが起こりがちです。
これらの問題に地上では気づかずに、宇宙で問題が起こってしまうと、もうどうしようもないですが、地上検証の段階で起きた場合には、「なんとかしよう」ということになります。特に、後者の場合、「せっかく、これまで(サイズが小さいとき)はうまくいっていたので、何とかしたい」という気持ちになるのではないかと思います。
そういったときに「これはこれこれこういう理由でうまくいかないと思うので、ここをこうすればうまくいくと思いますよ」と提案できるのがcosmobloom社、と言われるようになりたいと思います。
ちなみに、左上の図は、1960年代にNASAが考えていた、”Tension shell“という、大気圏突入時の減速構造の概念で、これをベースにした、インフレータブル構造の「エアロシェル」の研究が盛んになっています。こういった構造も、まさに、上記の話が当てはまる構造かなと思います。
宮崎 康行