系外惑星とスターシェード①
こんにちは,cosmobloomの中村です.
HPでも少し紹介していますが,学部から現在にかけて系外惑星の観測装置であるスターシェードについて研究しており,これまでブログに書いたことがなかったので,系外惑星周りの話も含め何回かに渡りちょっと紹介させてもらおうと思います.
太陽の周りに地球や火星といった惑星が回っているように,夜空に輝く恒星の周りにも惑星が回っていることが知られており,それらは太陽系外惑星,略して系外惑星と呼ばれています.2023年10月現在,The Extrasolar Planets Encyclopaediaによれば,5000個以上の系外惑星が発見されており,2019年には,世界で初めて系外惑星を発見したスイス・ジュネーブ大学のマイヨール氏、ケロー氏がノーベル物理学賞を受賞しています.
今ではその存在が当たり前かのように語られる系外惑星ですが,マイヨール氏、ケロー氏が1995年に初めて系外惑星が発見する前までは,フィクションでしか語られることのないものでした.1940年代に系外惑星探査が始まってから,発見されるまでに長い年月を必要としたことから,それまで科学の世界では悲観的な見方が支配的だったそうです.
発見までに長い年月がかかった理由としては,その観測が非常に難しいということが挙げられます.それまで天文学でよく観測されていた天体は,恒星といった自ら光り輝く天体であったのに対し,惑星は光を発することはありません.また惑星は恒星に比べて非常に小さいです.地球からとてつもなく離れた場所にある光らない小さな惑星を探すというのは,当時の技術では至難の業だったようです.
そこで天文学者は,恒星の微妙な光の変化を観測して「間接的」に惑星の存在をあばくという方法(間接法と呼ばれます)を編み出します.最初に発見された系外惑星も,この間接法の一種である視線速度法により発見されました.視線速度法は,惑星を持つ恒星が惑星の引力の影響によってふらつく際の光のドップラー効果を利用することで惑星の検出を行う方法です.また,現在の系外惑星観測で最もポピュラーな観測手法としてトランジット法が挙げられます.これは惑星が中心星を横切ること(食)によって,中心星が周期的に減光することを検知する方法です.
上に紹介したいずれの手法も,惑星が恒星を周回する際に起こる恒星への影響を観察することで惑星の存在をあばくものであり,惑星の姿を直接的にとらえることはできません.現在の技術をもってしても上述の問題から直接的に惑星の姿を撮像するというのはやはり難しく,間接法により5000個以上の系外惑星が発見されているにも関わらず,直接撮像がなされたものは20例ほどしかないそうです.また撮像されたものも,地球近傍で,サイズが大きく主星からの距離が離れているもの等かなり限定的なものとなっています.
スターシェードはこの直接撮像を実現する装置なんですが,その詳細は次回で紹介したいと思います.