振動試験
こんばんは.cosmobloomの中村です.
前回のブログで,宇宙機の強度設計(打ち上げの加速度や振動でそれらが故障しないかを解析で確認すること)について紹介しましたが,設計をした後はモノを製造し,実際に壊れないかを試験で確認することになります.具体的には,衛星やコンポーネントを加振台に乗せ各軸方向に加振させて試験を行うため,これらの試験は振動試験と呼ばれています.
比較的小さい衛星やコンポーネントの振動試験では,大まかに分けると①正弦波振動試験,②ランダム振動試験,③サインバースト試験,④モーダルサーベイ試験の4つの試験を行います.①~③の試験に関しては,通常ロケット側から加振レベルや周波数等の条件が出されるため,その条件のもと加振を行い,モノが壊れないことを確認します(強度設計もこの条件下でモノが壊れないように進めていきます).
①の正弦波振動試験では,文字通り加振台を正弦波上に振動させて試験を行います.数Hz~100Hz程度までの範囲で,既定レベルで加振を行いモノが壊れないことを確認します.②のランダム振動試験では,様々な周波数が合わさった振動によりモノを加振します.数十Hz~2000Hz程度の範囲において各周波数で振動レベルが規定され,それらが合わさった振動により加振します.①と②の試験は,ロケット打ち上げ時の振動を想定したものでそれに耐えうることを確認する試験ですが,振動の他にもロケットが宇宙へ飛んでいくときの静的加速度荷重に耐えられるか,ということも確認する必要があります.しかし,モノに静的加速度荷重をかけることはなかなか難しく,真面目にやろうとすると装置が大がかりになったり(長いアームの先にモノをつけてぐるぐる回す等)と結構大変です.そこで,加振機によりこの静的加速度荷重を模擬するのが③のサインバースト試験です.この試験では,構造の最低次固有振動数よりも十分に低い周波数において,加速度振幅が静的加速度荷重の要求値を上回った状態で数十回加振して壊れなければよい,ということになっています.
①~③の試験では,宇宙機が打ち上げの加速度や振動で故障しないか,何か不具合が起こらないかを確認することが目的です.この,「モノが故障していない,不具合が起こっていない」ということを確認するためによく行うのが,試験の前後に共振振動数を調べて比較するというものです.振動試験により何かが起こったとしたら,共振振動数が変化することが予想されるため,逆に変化しないことを確認すれば,不具合が起こっていないことを証明することができます.これが④のモーダルサーベイ試験です.具体的には低い振動レベルで低周波から高周波まで正弦波加振を行うことで共振点を調べます.この試験では共振点や減衰比がわかるので,事前の解析結果と比較することで設計通りにモノを作ることができたかを確認することができます.さらに,試験と解析の合わせこみを行い,解析モデル上においても壊れる心配がないということを示す必要があります.
しかし,共振点や減衰比は,ねじの締めこみ具合や少量の接着剤を塗ったりテープを貼り付けたりといったことで変わってしまいます.展開構造においては,ねじ止めはされておらず接触しているだけといった箇所や,摩擦によって止まっているといった箇所が多く,その箇所のがたつきや動的接触により共振点がずれるといったこともあり,なおさら難しいものとなっています.実際に正しく試験と解析の合わせこむのはかなりの知識と経験が必要だと思いますので,(強度設計の時にも書きましたが)日々勉強しつつこの分野に関して経験を積み上げていきたいと思っています.