ロータリーダンパの開発
こんにちは.cosmobloomの中村です.今日も暑いですね.
さて,今日の話題は,ロータリーダンパです.聞きなれない言葉かと思いますが,地味ながらも展開構造周りで重要な役割を果たしている部品ですので,少々お付き合いください.
ロータリーダンパとは,機械の可動部分,特に回転の動きにブレーキをかけることで減速・減衰させる部品です.ものとしては,左の絵のように歯車が搭載されているものが多く,これに別の回転体をかみ合わせて動かすと,動作が通常よりもゆっくりになります.世の中では案外いろいろな所で使われており,ピアノの鍵盤蓋やトイレの便座蓋等に使われています(ゆっくーり閉まるような蓋や小さな扉は大体これが仕込まれています).
展開構造は,モータ等の力を使わずに自動的に伸展/展開する構造(自己伸展/展開構造などと呼ばれます)が採用されることが多々ありますが,その際に問題になるのが伸展/展開のスピードです.こういった構造は,おおよそ部材がばね性を有しており,それを小さなスペースに丸め込んで収納しています.そのため,展開の際には丸め込んだばねのエネルギーが一気に解放されて,比較的速いスピードで展開していきます.このスピードが速すぎると,その衝撃力で搭載している衛星に悪影響を及ぼしたり,構造自体がダメージを受けたり,そもそも伸展に失敗してしまったりといろいろな問題が起こります.
そんな時に使われるのがこのロータリダンパです.これにより,展開のスピードを落とし,衝撃力を緩和させることで,搭載衛星や構造自体を守り,安全に確実に展開を行います(地味ですが,大事な部品なんです).ロータリーダンパにも様々な種類が存在していますが,現在,市場に出回っている搭載性のよい小型のダンパは,機構内部にシリコンオイルを封入し,その粘性抵抗でもってブレーキをかけているものがほとんどです.そのため,残念ながら宇宙で使用できるようなものではありません(オイル漏れ・蒸発による性能低下の懸念や,他機器の汚染等の問題による).
そこで我々は,これまで研究室の先輩方が培ってきた技術を基に,宇宙環境でも使用可能なオイルレスダンパの開発を行っています.実際に2025年ごろに展開構造に搭載し,宇宙環境で動作を実証する予定ですので,現在はその設計や,試験計画を立てているところです.cosmobloomとしては,なんとかいいダンパを作って自分たちの設計する構造に乗せたり,皆さんのお手元に届けたい,と思っているところです(ちゃんといいものができれば,目玉商品になる…はず?)