SSC備忘録(現地編)

こんにちは,cosmobloomの中村です.これまでに引き続き,Small Satellite Confarence参加にあたっての備忘録を書き記したいと思います.今回は現地編で,これでSSC関連の更新はとりあえず最後にしたいと思います.

これまでのブログはこちら → 事前準備編 出国編① 出国編②

〇1日目

初日は,展示ブースも設けられておらず,自身の発表もなかったため,とにかく聴講の日でした.気になった発表は以下でした.

  • 展開構造の発表:画像のように,CubeSatから小さめの構造を開いてアンテナとして使ったりといった内容.この日だけで2件ほど同様の発表がありました.画像のものはアンテナの周波数が30GHzと高めで,かなりの面精度が要求されるため小さめのパネル構造になっているようです.構造の精度を維持しつつ,大型・軽量化するというのはまだまだ難しく,そこに取り組んでいく必要がある(そこができれば海外と差がつけられる)と感じました.https://digitalcommons.usu.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=5533&context=smallsatより引用.ヒンジ部は,省スペース化のため一般的なバネヒンジではなく,湾曲した金属メッシュを使用しており,それがばねのようにふるまうそうです.また,パネル間は磁石でくっつくようになっており,アンテナどうしの相対位置を適切に保っているとのこと.磁石がアンテナ性能へ及ぼす影響はまだ解析していないみたいでした.
  • 3Dシーン生成技術:NeRF(Neural Radiance Fields)という技術に関する発表でした.たくさんの2D画像から,機械学習を使って3Dシーンを作成できるそうで,発表としては月のクレーター等の再現,その情報に基づく探査箇所や着陸位置の決定といった内容でした.個人的には,こういうものって,軌道上での構造物の形状計測に使えたりしないのかなと思ったり(計測精度という点ではまだまだ微妙そう…)https://digitalcommons.usu.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=5535&context=smallsatより引用.クレーターの3Dモデルをレンダリングソフトで作成し,その写真を複数枚取ったデータから,NeRFで3Dシーンを作成した結果だそうです.発表では,クレーターの3Dシーンがぐりぐり動いていました.
  • DiskSat:名前から想像できるように,画像のようなディスク状の衛星をVLEOに打ち上げるという計画です.ロケットへの大量搭載が可能で,コンステレーションを組むことが用意なことに加え,大気抵抗も受けにくく超低軌道に投入できることから,高解像度のSARコンステとして使えるのではないかという提案でした.こういった衛星の形は,スターリンクでも採用されていて,ゆくゆくは衛星の形の新たなスタンダードになっていくのではと(私は)予想しています.この衛星の形は,私たちが研究している自己展開構造の構造様式とも親和性が高く,何かいいミッションができないかと一人であれこれ想像していました.Credits: The Aerospace Corporation

〇2日目

2日目は自身のポスター発表の日でした.発表の内容としては,研究室で開発中の自己展開構造のコンセプトとその軌道上実証計画,BBM設計に関するものだったのですが,英語での発表ということで緊張しました(発表内容の詳細については今後ブログで紹介できればと思います).

午前と午後それぞれで1時間弱程度のポスター発表時間が設けられており,写真の通り盛況でした.大変ありがたいことにたくさんの方々にポスターを見に来ていただき,午前中は予定の時間を1時間程度オーバーするほどでした.説明する中でウケがよかったのは,開発中の展開構造の実際の展開動画でした(事前にタブレットにデータを入れておいて,それを見てもらいました).こういった動画はやはりインパクトがあるので,webにアップロードして皆様に見ていただけるよう,会社のYouTubeチャンネル等を作成するなどして,体制を整えようとしているところです.

↑ポスターセッションの様子と発表後の写真.発表を通して,自分の英語力のなさを改めて思い知らされました.相手の言っていることが聞き取れない・わからない時は全くわからない…ほんとどうにかしなきゃいけないです.

〇3日目

3日目は展示ブースがオープンしたので,見て回りました.以下,雑多ですが気になったものを載せます.

↑MMADesignの膜面アンテナ.スパイラルアンテナの一種でシノースアンテナと呼ばれるものです.恐らく,1m四方程度の大きさでした(高い位置に展示してあったので目測です).個人的には折りたたみ方が気になったのですが,そこまでは教えてくれませんでした笑

↑広い展示スペースで,ひときわ目立っていたOPTERUSの複合材伸展ブーム.おそらく3~4mは伸びた状態で展示してあり,近くに行くと,迫力がすごかったです.伸展機構内部は,ブーム進展時の力の調整のためのローラーとベルトが張り巡らされており,かなり複雑な機構になっているようです.

↑EBADの非火工タイプの分離アクチュエータ.この手の製品は展開機構の保持解放機構によく用いられ,研究室でもたびたび話題になるのですが,初めて実物を見ることができました.ウェブ等で情報を得ている物でも、実物を見たり触ったりすると、実際に使う時のことがさらに具体化されるのがやっぱりいいなと思いました.

以上,現地編でした.他の方の発表・展示ともに面白いものばかりで,(もう少し自身の英語スキルを向上させて)また行きたいなと思いました.また,学会は6日間通して開催されるのですが,今回は前半の3日間のみの参加でしたので,次回行く際はぜひフルで参加したいです(そのためには成果を出さないとですね).

cosmobloom

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